ホスピタリティー・感動のサービスが実現する時
お客様の要望にできるだけ応えたい 感動の和洋菓子店 六花亭
六花亭は、販売員の素晴らしい笑顔とていねいな接客で、和・洋菓子業界でも一目置かれている名店である。この店の「マルセイバターサンド」は、北海道旅行のお土産として広く知られるお菓子だ。
その六花亭に、こんなエピソードがある。
北海道旅行中の京都の女性3人グループが、お土産を買うために札幌の六花亭までやってきた。しかし夜7時を過ぎていたため店は閉店しており、あきらめて帰りかけた。そのとき、帰り支度をすませた私服の従業員が店内から出て来て、困った顔で店の外にたたずんでいる3人に声をかけた。3人が次の日の朝には京都に帰ることを知った従業員は、「少々お待ちください」と言って、また店に引き返したのである。しばらくして、ユニフォームに着替えた販売員が、素晴らしい笑顔で遠来のお客様を迎えたのだ。『ようこそ、いらっしゃいませ』ショーケースにはきれいにお菓子が並べられていた。3人はたいへん驚き、感嘆の声を上げたという。
このような場合、ほとんどの店では「もう店じまいしました。またどうぞ」と言われてしまう。中には、お客様に外で待っていただき、注文の品を持ってくる親切な店もあるかもしれない。しかし六花亭では開店時と同じように、ショーケースに商品を並べ直し、ユニフォームに着替え、最高の笑顔で迎えてくれたのである。こんなすばらしい対応に感激しないお客様はいない。
昨年、六花亭の札幌全店を統括している和田支店長に取材をした際、彼は六花亭の姿勢を次のように語った。「企業であると同時に、いつまでも変わらない個人商店という考え方でお店を営業させていただいています。お客様の要望にできる限り応えていきたい。どうしたらそれができるかを常に考え、行動していきたいのです」六花亭では社内報が毎日発行されており、これが顧客満足度アップに一役買っている。その仕組みをご紹介しよう。
六花亭では、全従業員(社員もパートも)が一人一日一情報を所定の用紙に記入し、本部へ提出することになっている。テーマはその日の出来事や仕事の改善提案、お客様からの意見や要望、お褒めの言葉やクレームなど、何でもよい。本部の社長のもとには、全53店舗から毎日数百人分もの情報が届く。社長はそれらすべてに目を通し、その中から印象的なものを自らピックアップして、翌日の社内報「日刊新聞六輪」に掲載する。そしてこれが毎日全店舗へ届けられるのだ。B4版で12~15枚というボリューム。これを16年間継続している。
昨日あった出来事が、翌日全スタッフに伝わる。どうすればお客様に喜ばれるかという具体的な事例がたくさん掲載されており、わかりやすくて非常に役に立つ。しかも、これを読んで自分も頑張ろうと思う人が増え続ける。成功事例の共有化だ。これが大切なのである。ぜひ参考にしていただきたい。
詳しくは「感動のサービスが実現する一瞬」(中経出版 田中司朗著)をお読みください(笑)。