特別編集記事

実力店長を生み出す「本部の仕組み」

一流のサービスを提供する企業には、必ず従業員を評価して表彰するシステムがあります。たとえば東京ディズニーリゾートには、素晴らしいサービスをしたキャストに幹部がその場で手渡す「ファイブ・スター・カード」や、キャスト全員で最高のキャストを選ぶ「スピリット・オブ・東京ディズニーリゾート」というシステムがあります。またリッツ・カールトン・ホテルには「ファーストクラスカード」(ありがとうカード)やファイブスター制度(従業員の投票で、5つ星の活躍をしたスタッフを表彰)などがあります。飲食店チェーンにも同様の仕組みがあります。実力店長シリーズを8年間続ける中で、実力店長を輩出する企業には、本部による優れたバックアップの仕組みがあることを実感するようになりました。その一部を紹介します。

1.感動共有メール

グローバルダイニングでは、お客様からの感動メールが全店に伝わるようになっていて、いいアイデアはどの店でも活用できます。レベルの高い事例がすみやかに伝わることで、全員のホスピタリティ・マインドがどんどん向上していきます。

2.ナレッジ(知恵)グランプリ制度

きちりではナレッジという気配り事例を全店で共有し、優れた事例を評価するナレッジグランプリという表彰制度も設けられています。たとえば、お客様の名前を伺った後は常に名前で呼びかける、連れのお客様の到着が遅れるときは事前に名前を伺っておき、「○○様、お待ちしておりました」と言ってお迎えする、等々。これらのナレッジを朝礼やスタッフミーティングで紹介することで、気配りの精神やおもてなしレベルが一段と上がります。

3.バリスタ認定・ファシリテーター資格制度

スターバックスでは、全店18000人のスタッフがバリスタ認定(コーヒーのスペシャリスト資格)を受けています。コアクラスを教えることのできるファシリテーターを認定するプログラムもあり、アルバイトが年長者を教える風景も珍しくありません。また、パートナーが自主的に意見交換できる「ハート・オブ・スターバックス」という集いの場もあります。これらのシステムが、スターバックスのブランドを支えているのです。

4.QCサークル活動

全国的にも有名なのが、がんこフードサービスのQC。顧客満足度の向上、経費節減、店内マニュアル作成など、優れたアイデアの数々で、P/Aが店長のサポートをしてくれます。

5.ロイヤルカスタマーのカルテ化

カシータでは、1万人以上のロイヤルカスタマー情報がカルテ化され、電話番号から好みのメニューやアルコールに至るまで一目でわかるようになっているため、事前に入念な準備ができ、お客様に喜ばれるサプライズ演出が可能です。

6.ドリームチームで各店のレベルアップ

各店の最優秀メンバーを集めてドリームチームを編成。全店を回ってP/Aに優れたオペレーションを見せ、全体のレベルアップを図るシステムです。

7.全国規模の接客コンテスト・技能コンテスト

マクドナルド、KFC、吉野家、牛角、CoCo壱番屋などの大手チェーンには、全国規模で行う各種コンテストがあり、日本一のアルバイトが誕生します。地区予選会に向けて頑張るため、オペレーションのレベルアップにもつながっています。

8.P/Aコンベンション開催

アルバイトを卒業式や決算期に、全店のアルバイトを集めてコンベンションを開催。勤続を称えたり、最優秀賞や新人賞、、チームワーク賞など、さまざまな賞でP/Aを評価し、やる気を促します。

 この他にも、店長教育や女将教育、店長の表彰制度など、本部による各種サポート体制があります。本部が店舗に対するサポートセンターとしての役割に徹している企業ほど、実力店長を輩出しやすい環境にあると言えるでしょう。

※飲食店経営 2009年12月号特集コラム

バックナンバーページへ