特別編集記事

人材育成を継続する企業だけが生き残る

 私はフードサービス企業に20年間勤務した。その後コンサルタントとして飲食チェーンの教育現場で活動するようになり、さらに20年が経過しようとしている。これまでにお手伝いさせていただいた企業は250社。その経験から、成長を続けているのは教育投資を惜しまない企業であることを実感している。
 トップ自身の店舗クリニック、部長やスーパーバイザー対象の管理職教育、毎月の店長会議での教育、P/Aの初期教育等々、あらゆる階層別の教育が充実している企業だけが、成長し続けるチェーンを作り続けているのだ。
 世界最大の小売業「ウォルマート」の創始者、故サム・ウォルトンは次のように語っている。「私が他社のどの経営者よりも勝っていたのは、頭の良さや決断力や統率力などではない。他社の店をだれよりも多く視察し続けてきたためである」と。学ぶ姿勢をやめたときから、企業は衰退するのである。
 では、外食チェーン各社は社内外でどのような教育を行っているのだろうか。具体的に解説していこう。

1 社内○○大学の創設

 店舗数が30、50を超える規模になると、店長育成や新入社員教育に力を入れるため、教育部門の立ち上げや整備を進める企業が多い。○○大学や○○アカデミーはその一例だ。教育担当の責任者を決め、リーダーシップやマネジメント、コミュニケーション、ホスピタリティ、計数管理、P/A育成などの知識や技術について、OFFーJTで教育していくのである。

2 毎月の店長会議での教育

 店長会議では、トップの方針、営業部長の政策、QSCの最近の問題点と改善点、新メニュー紹介、店長の成功事例発表、月次店舗業績などを議題として取り上げ、店長一人ひとりの意識を高めていくことが必要だ。優れた店の成功事例を標準化させ、部門全体で、また全店で実践していくのがポイント。これがチェーンストアの強みとなる。

3 資格取得制度と社内コンテスト

 バリスタの資格、居酒屋の焼き師資格、個人のスキルをステップアップしていくマスターライセンス制度など、技術を向上させるための各種資格制度を導入し、取得をバックアップしている企業がある。
 また、ホスピタリティやスマイル、クッキング、新メニュー、寿司職人など様々な形で社内コンテストを実施し、スキルとモチベーションの両方を上げている企業も多い。

4、トレーニングセンター設置

 私のクライアント先にも、新入社員教育やアルバイトの初期教育用に、店舗と同じ設計のキッチンとホールを備えたトレーニングセンターを設置している企業がある。企業内大学で理論訓練し、トレーニングセンターでOJT教育を実践していくのである。加盟店指導のためにも、フランチャイズ本部にはこのようなシステムや設備が必要だ。

5 社外セミナー参加と社外講師による講座

 社外セミナーには、専門知識の獲得と社外の人脈拡大という2つの大きなメリットがある。私自身も実務時代にはたくさんの社外セミナーに参加し、他企業の優秀な人材と交流した。そのおかげで今の自分があると実感している。また社外講師を招いて店長や管理職に刺激を与えることで、組織は活性化し、さらなる進化を目指すことができる。  教育は一朝一夕で成し遂げられるものではない。常に最優先事項の一つとし、手間と経費を惜しまないことが望ましい。

6 国内のストアコンパリゾン

 1000店を超えるようなチェーンストア企業は、今どういうテーマを掲げて顧客満足度を上げているのか? 現在急成長中のチェーンや話題店の看板メニューは何か? 売れている理由やQSCの現況は? …学ぶに値するこういった他店の状況を店長自身が観察・分析し、自店のレベルアップにつなげていくことが重要。ストアコンパリゾンの目的は、武器の発見である。
 ちなみに私は若い店長時代、しばしば全店の店長とともにバスでストアコンパリゾンに出向いた。バスの中で調査店舗の強みを発表し合ったのだが、自分とは違う角度からの意見も出て、ずいぶん勉強になったものだ。

7 海外セミナーの開催

 チェーンストア先進国の米国視察セミナーは、店長やSVにとって最も刺激的・効果的でモチベーションが高まる教育体験である。これまで、どれほど多くの日本のチェーン企業が米国から学び、多数のチェーン店づくりを成功させてきたことだろう。1万店を超える世界的企業から新しいチェーンまで、米国の実情と潮流をつかみ、自社の次の一手に活かしたいものだ。

8 月1冊のビジネス書(レポート提出)

 私のクライアント先にも、新入社員教育やアルバイトの初期教育用に、店舗と同じ設計のキッチンとホールを備えたトレーニングセンターを設置している企業がある。企業内大学で理論訓練し、トレーニングセンターでOJT教育を実践していくのである。加盟店指導のためにも、フランチャイズ本部にはこのようなシステムや設備が必要だ。

2016年2月号特集コラム

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