特別編集記事

アルバイトが辞めない「店長の習慣」 ~ スタッフの「自己重要感」を満たす実力店長の習慣 ~

スタッフの「自己重要感」を満たす

 デール・カーネギーは著書「人を動かす」の中で、人を動かすにはその人の「重要人物たらんとする欲求」つまり「自己重要感」を満たすことが必要だと述べている。自分は価値ある存在である、店長に認められている、この店で必要とされている、自分は日々成長できていると、実感できることが大切なのだ。
 店長は、スタッフの自己重要感を満たすことを常に意識しなければならない。そのためにどんなことをすべきだろうか。実力店長たちはどのように行動しているだろう。

1.新人スタッフとはスタートの1週間、毎日面談!

 ロウリーズの実力店長(総支配人)のもとでは、スタッフの定着率が抜群。大学卒業と同時にロウリーズを卒業する人以外は、ほぼ全員在籍している。
 ① P/Aは初期教育でオペレーションの基礎を徹底的に学ぶので、実践への不安がない。
  店長は新人入店後1週間は毎日面談し、メンタルな面でもしっかりフォローしている。
 ②担当トレーナーが新人に付きっきりで徹底教育している。
 ③店長とスタッフ全員とのコミュニケーションが良好で、声掛けの量が多い。
 ④自分の存在が認められ、この店で必要とされているのをスタッフ全員が実感している。
 ⑤スタッフ全員がロウリーズへの愛着心と誇りを持っている。
 特に新人に対しては、「不安なことがあれば言ってね」「トイレは大丈夫?」「喉が渇いてない?」などとこまめに話しかけている。このような声掛け、スタンドミーティング、面談を毎日実施しているから、新人が辞めることはない。

2.「プライベートの顔」でもっとコミュニケーション!

 人は、コミュニケーションの回数が多いほど相手を好きになり、信頼も大きくなるといわれる。反対に、その総量が不足している相手のことは苦手だと感じやすい。スタッフの定着率がいい店では、店長は「ビジネスの顔」と「プライベートな顔」の両面でコミュニケーションを図っている。ビジネスの顔でのやりとりはもちろん大切だが、それだけでは心の距離感は埋まらない。店長のプライベートな顔を知ればスタッフも親しみを感じてくれる。会話の幅が広がり、ふれあいの総量が増えて、意思の疎通がよりスムーズになる。
 あなたはスタッフのプライベートな情報をどれだけ知っているだろうか? 誕生日、出身地、血液型、好きなスポーツや音楽や食べ物やブランド、よく見るテレビ番組や映画、性格やこだわりなど、知れば知るほどその人のことが理解でき、好感を持てるはずだ。

3.成長を実感できる、毎月の「個人目標設定」を!

 ドトールコーヒーと焼肉きんぐの売上トップの店では、スタッフが50人以上在籍しているのに辞める人がほとんどいない。
 ドトールの店長室にはスタッフ全員の個人目標が掲示され、それを各スタッフがきちんと実践している。たとえばアルバイトリーダーは「コーヒー豆テイクアウト、60kg売り切る」「新人のAさんのトレーニングに力を入れる」「笑顔をみんなに広める」などと記入。その日の達成率も発表する。先輩スタッフも後輩の目標を掌握し、サポートする。スタッフの頑張りを応援する店長の姿勢を受け継いでいるのだ。
 焼肉きんぐの実力店長は、新人スタッフの初日に「先輩スタッフは君のためにマニュアルを読み返して勉強している。君の居場所はここにあります。期待しています」と話す。こんなふうに言われたら、どんな新人でも頑張ろうと思うはずだ。このような自己重要感を日々スタッフに与え続けるこの店長は、全員から非常に信頼されている。その影響を受け「店長のようになりたい」と考えて、6人が物語コーポレーションに入社した。

4.ほめる仕組みと表彰制度でモチベーションアップ!

 スターバックスコーヒーには「GABカード」と呼ばれるシステムがある。自分がしてもらって嬉しかったことやすごいと思ったことなら何でもこのカードに書いて、それをしてくれた仲間に渡す。たくさん集まるとピンバッジがもらえる。モチベーションが上がって店の空気もグンとよくなる。これも自己重要感を高める仕組みの一つだ。
 給与明細書に店長からのサンクスレターを添える、よいサービスやサジェストをするとスタンプカードに店長印が押される(スタンプラリー)、店内接客コンテストやクッキングコンテストの開催・表彰する、スタッフの誕生日に仲間全員からLINEでおめでとうメッセージを送る…等々、自己重要感を満たす仕組みはいろいろある。店長は常にスタッフ一人ひとりのことを考え、ほめる仕組みを活用してやる気を促すようにしよう。

5.「1日1人面談」で、人に強い店長に!

 ベビーフェイスの実力店長はコミュニケーション能力が高く、「人に強い」と本社から評判だ。毎日1回はP/Aの誰かと10~20分の面談をする。店長の想いに共感してもらうことや、やる気を促して自主的に考え実行する力を伸ばしてもらうことが目的である。「P/Aの声にならない声をいかにしっかり聞き取るかが店長の腕の見せどころ。それができれば、店長の仕事は驚くほどスムーズになります」と語ってくれた。
 飲食店の店長は退職面談をほとんどしないが、ある実力店長はこれを積極的に実施。退職する人に「お辞めになるのは店長である私の責任です。申し訳ありませんでした」と、まず謝る。そして店に対する本音(労働環境や他のスタッフとの人間関係など)を真摯に聞く。それをもとに問題点の改善を図り、定着率をほぼ100%にまで上げたのである。

6.太陽のように明るく前向きな店長に!

 リーダーシップとは、太陽のような明るさだと私は思っている。明るく前向きな店長のもとには人が集まり、笑顔いっぱいの店になる。
 大かまど飯・寅福の店長は、人を幸せにするパワーを持った実力店長だ。常にP/A全員に陽気に声をかける。スタンドミーティングで一人ひとりの話をしっかり聞く。シフトを上がる人には「お疲れさま、ありがとう。今日はどうだった?」と優しく尋ねる。毎日毎日、笑顔でこれを行う。部下にほほえむ。ありがとうと言う。ほめる。関心を寄せる。明るく接する。それらを確実に行うことで、チームワーク抜群の店になっていくのだ。「店長は太陽であるべきです。明るい笑顔でみんなを元気にする、みんなにエネルギーを分け与えられる、そんな人間になりたいと思います」と語る店長である。

 店長にとって一番大切なのは愛情。店が大好き、スタッフが大好き、会社が大好きで、愛情に満ちあふれた店長のまわりには、辞めたいと思うスタッフはいない。愛情を込めて彼らと向き合い、理解し、好きになり、ほめて自信を与え、自主性を促そう。あなたと共に長く働くことを誇りに思ってくれるスタッフを、一人でも多く育てていただきたい。

2017年1月号特集コラム

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