ホスピタリティー・感動のサービスが実現する時

1回の偶然のチャンスを次の必然に変える!

 滋賀県の和菓子屋「たねや」さんの話です。観光専門コンサルタントの西川丈次さんが、台風が近づいていて激しい雨の日、ぜんざいを食べ休憩した後、タクシーをお願いしました。

会計を済ませた後、
「どうぞ店内でおかけになって、ゆっくりとなさってください。タクシーが来ましたら、私、〇〇がお声を掛けさせていただきます」これは、私が責任を持って対応しますという姿勢の表れです。


 店を出てタクシーに向かう時に、傘を開こうとしたら、「どうぞその傘はそのままで、私どもの傘にお入りください」と、傘をさしかけてくれました。
タクシーを呼んでもらう時に告げた行き先は、近江八幡駅でした。
これから電車に乗られる方の傘を濡らしては、電車の中の扱いが大変だろう。そんな想いからの行動ではないでしょうか。
そしてその販売員さんが運転手に言われた言葉。
「ドライバーさん、大切なお客様です。駅まで安全運転でお願いします」
私たちは、男3人は、たくさんの買い物をした訳ではありません。ぜんざいを食べに、たまたま立ち寄っただけの客です。その我々を「大切なお客様」と呼んでくださったのです。

駅に着いて支払いをしようとすると、最後の衝撃。
「たねやさんからいただいていますので」・・・・・信じられませんでした。
「何かの間違いです。私共はぜんざいを食べただけの客なので、どうか受け取ってください。たねやさんにお返しください」と言っても、「困ります。たねやさんから私がお叱りを受けますので」と受け取ってくれません。

去っていくタクシーを見送りながら、ただ呆然としていました。レシートがあったので、すぐ電話をかけました。

「何かの間違いだと思うのですが・・・・」すると、「いいえ、間違いではなく、わざわざこんなお足元の悪い中をお越しくださいましたので、私どものほんの気持ちです。またのお越しをお待ち申し上げております」
完全にやられました。これが地元の人たちから「たねやさん」と「さん」付けで呼ばれる企業の「おもてなし」なのです。
お客様からいただいた1回の「偶然のチャンス」を次の「必然」に変える。このサービスは伝説のサービスとして広く知られるようになりました。

私も彦根までドライブすると、たねやさんに立ち寄ります。一度訪ねてみてください。

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