特別編集記事

コロナ不況でも売上前年比100%、凄腕店長の奮戦記!

新型コロナショックの影響で、飲食業各社が2月~3月の売上が30~70%ダウンという厳しい営業状況にある中、3月の売上100%越えを実現している凄腕店長お二人をご紹介しよう。

1.地域密着営業と「かに弁当」宅配で、11年連続売上伸長中!(3月売上1750万円、前年比104%)

 かに料理 岡崎甲羅本店 富崎 良治 店長
 最初に紹介するのは、「かに料理 岡崎甲羅本店」の富崎良治店長だ。2年前にも「実力店長シリーズ」に登場した優秀な店長だが、現在も11年連続で売上を伸長中である。コロナ不況渦中の3月にあっても、売上前年比104%(1750万円)を達成した。(すばらしいです!)
 岡崎市に新設された医療センターが、ニュースにもなった新型コロナウィルス感染の確認された豪華客船の乗客たちを受け入れた2月18日から、宴会のキャンセルが相次いだ。3月だけで300万円を超える損失である。2月を含めると430万円に上る。富崎店長の戦いが始まった。

3月の売上前年比104%の4要因

 ・ロイヤルカスタマー(超常連客)営業訪問
 富崎店長は毎日全テーブルを回ってお客様に挨拶をし、1日5~10組のお客様と名刺交換をしている。これまでに集まった名刺は1万枚以上。名刺交換したお客様に関する「営業ノート」は20冊にも及ぶ。その中でも特に親しいロイヤルカスタマー(お店のファン、社外協力者)を訪問し、来店をお願いした。内訳は、30社に及ぶ企業のトップや幹事、20近くに上るお寺の住職や神社宮司である。おかげさまで、この方たちの多くにご予約いただくことができた。富崎店長が攻めの営業ができるのも、女将やスタッフが店をしっかり守ってくれているからだと感謝している。

 ・DM800枚発送
 上顧客800人に「かに会席4000円お値打ちコース」のDMを発送。小グループの予約をたくさん確保することができた。

 ・ご自宅でお祝いキャンペーン
 3月限定企画として、岡崎店オリジナルの「家族でお祝いキャンペーン」チラシを作成し、DM発送(昨年、お食い初め・一升餅・お宮参り利用のお客様)と地域情報誌への掲載を実施した。これは持ち帰り限定のファミリーセットで、6300円(3~4人前)。130セットを販売し、88万円を売り上げた。

 ・かに弁当デリバリー
 コロナショックでテレワークが増えたり外食を避けたりするようになったことから、前述の企業訪問時に宅配弁当もご案内し、かに弁当(2000~3000円)のデリバリーを行った。親しい会社の営業所長や支社長らが、「甲羅の富崎に弁当を発注せよ」と部下社員の方々を促してくださったという。(ありがたいことですね!)また、宴会のきめ細やかな送迎サービスに感動していただいた某保険会社からも、会議弁当の注文をいただいた。弁当デリバリーは314個の販売、80万円の売上となった。

お客様にとって「不可欠」な店

 毎月のように来店していた常連のご家族(60代のご両親と娘さん)が、ある時から急に姿を見せなくなった。1年ほど経って、母娘2人で再び来店した。注文は3人前。お父さんは他界されたとのことだが、お母さんはお父さんの写真を取り出してテーブルに置き、生前のように3人で食事をした。店長はお父さんが好きだったお酒をお出しし、「3人で写真を撮りましょう」と言って、家族3人の食事会を盛り上げたのである。お2人にはとても喜んでいただくことができた。
 お父さんが亡くなったのはとても悲しいことだけれど、変わらずこの店で食事をしてくださるのだ。「この店がこのご家族にとって不可欠な存在になっていることがとても嬉しい。ありがたいことです」と、店長は語る。
 このようなエピソードがいっぱいの岡崎甲羅本店だからこそ、11年間もお客様から愛されて伸び続け、今回のような厳しい状況でもお客様に助けられているのである。



2.卓越したオペレーション力で、コロナショックでも売上前年比100%維持!

やきとりの扇屋 群馬町店 石神 由美子 店長(45歳)
 扇屋・群馬町店の2019年度の売上前年比は105%。3年連続伸長中で、本社からも社長賞を2回受賞するほど好調だ。コロナショックの影響下でも3月の売上前年比は100.9%(514万円)。今期も売上高前年比が扇屋東日本トップクラスである。
 この店を率いる石神由美子店長は、3人の子どもを持つシングルマザー。SNSでは「土日は満席だけど、行きたい店!」と高評価だ。お客様からも「従業員がよく教育されている」「笑顔がすばらしい」「この店は接客でなく接遇」と、サービスへの評価が高い。卓越したオペレーションを維持するポイントを石神店長に伺った。

優れたQSCオペレーションのポイント

 ・卓越したサービス(スピード提供&笑顔率95%)
 群馬町店では、提供時間の速さにこだわっている。満席続きの週末でもドリンク5分、料理20分以内が目安。やきとり1本でも遅れそうな時は「あと5分ほどでお出しできます」との声がけを徹底。ドリンク場、焼き場、揚げ場それぞれに時計が設置されており、何分経過しているのかがわかる。
 また、笑顔、表情、身ぶり、声の出し方、お客様に背を向けないなど、スタッフを徹底教育している。笑顔率を尋ねると「95%です。笑顔と仕事は共存していると教えています」とのこと。(すばらしい!)
 この店はファミリー客が多く、小学生までのお子様にはお菓子のつかみ取りサービスを実施。お子様にも親御さんにも喜ばれている。
 「接客と接遇」の話がお客様から出ると先述したが、石神店長自身、日頃から両者の違いにこだわり、スタッフを指導している。
・接客:お客様の要望に沿うため、必要なサービスを提供すること。
・接遇:必要なサービスから一歩踏み込んでお客様に寄り添い、心地よい時間と空間を提供し、心からのおもてなしをすること。
 石神店長の店長方針は「気の利いた丁寧なサービスで、お客様の食事環境を万全なものにする」だ。また「お一人の方や初めてのお客様の心をつかむチャンスを無駄にせず、しっかりおもてなしする」ことの重要性も、日々スタッフに説いている。

 ・クレンリネスの徹底
 この店では、毎日の安全清掃以外に月1回の大掃除を実施している。ゴミ箱、床、イス、トイレ、エアコン、換気扇など、毎日できない箇所を全員で徹底的に清掃する。「お子様連れも多いだけに、安心して快適に過ごしていただけるよう、とことん清潔にしてお迎えしたい」と店長は言う。

 ・全体ミーティングでディスカッション
 月1回の大掃除後、全体ミーティングを行う。店長から来月の方針、連絡事項、最近気になっていること、お客様からのお褒めの言葉やクレーム等が伝えられ、その後全員でディスカッションする。本社から指示された新メニューやキャンペーンなどが主な議題だ。これを円滑に実行する方法や、おすすめメニューの伝え方(トーク)等を具体的に話し合う。実行するのはスタッフなので、決めるのもスタッフ。自分たちで決めたことは実行率が高い。こうして自立型スタッフが育っていく。

一人ひとりが扇屋群馬町店!

 普段はスタッフのことをお客様から褒められるのが一番嬉しい石神店長だが、最近、年度替わりならではの嬉しい出来事があった。この3月に卒業したスタッフは4人。そのリーダー格だった男子大学生から「石神店長の店だったから4年間頑張れました。店長に育ててもらえて本当によかった。ありがとうございました」と言われたのだ。まるで自分の息子が旅立っていく気分だったと、感慨深げに店長は語る。
 4月から入った新人には、今日も「一人ひとりが扇屋群馬町店の顔一人でも、ほんの一瞬でも気を抜いたらダメ。それだけでお店の評価が落ちてしまうんだよ」と檄を飛ばす石神店長である。

2020年6月号特集コラム

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