特別編集記事

コロナ不況でも、テイクアウト&デリバリーで、日商平日55万円、週末110万円!

チーズマリノ 日進竹の山店 田村 匡毅 店長

 チーズマリノは株式会社マリノ(水野由太佳代表)が経営する、チーズに特化したイタリアンブランドだ。同社はピッツェリアマリノを中心に89店舗を展開しており、チーズマリノは現在4店舗。マリノといえば東海地区ではカジュアルイタリアンの名店として知られている。マリノのロードサイド店は29店舗。その中で日進竹の山店はナンバー1の売上を誇る。
 このマリノの新型コロナ対策には驚くべきものがある。日本国内におけるコロナショックの影響が深刻化しはじめた3月初旬、マリノは新聞折込チラシで「テイクアウト全品20%OFF」の広告を出した。この素早い行動に、東海地区の飲食店経営者はかなり驚き、ざわついた。
 チラシには「いつもマリノをご利用頂きまして、誠にありがとうございます。いろいろと心配事が多く、自粛が増える今ですが、お祝い事が多いこの季節にマリノの料理をご自宅でいかがですか? 皆様の思い出の1ページになるような、愛ある食卓の提案がマリノの願いです。大切な人とお幸せな時間をお過ごし下さい」というメッセージが書かれていた。この速やかな対応に私も驚き、感動した。


チーズマリノテラス盛況!
 私は名古屋郊外に住まいがある。近隣を車で走っていて、たまたまこの店の前を通った時、駐車場にテントを張った「チーズマリノテラス」に大行列ができているのを見て驚き、思わず自分も車を停めて行列に加わってしまった! それが今回の取材のきっかけである(笑)。ピザとパスタを買ったのだが、その美味しさと安さに感激した。
 この度のコロナ不況でも、日進竹の山店はテイクアウトとデリバリーで大成功している。今回はその立役者である田村匡毅店長にお話を伺った。  私も本当に驚いたのだが、店内での営業はなく、マリノテラスでのテイクアウト、電話注文によるテイクアウト、そしてデリバリーの売上合計(日商)が、週末は何と多い日で110万円、平日でも55万円だというのだ。
 4月中旬までは店内でもランチ営業だけはしていたが、それ以降は店内営業を休止。売上が落ちるどころか、4月の売上前年比は106%である。5月後半現在も店内営業なしで、売上は前年を125%(月商1500万円)上回っているとのこと。
 「マリノテラスのオープン後、すぐに昼と夕方の行列ができるようになり、こんなにもマリノが地域のお客様に愛されているんだと、あらためて実感しました。感動です!」と田村店長は語る。


テイクアウト大成功の3つの要因

1.ピザ・パスタ540円のお値打ち価格
 土日(日商)の売上構成は、マリノテラス50万円、電話予約のテイクアウト12万円、デリバリー8万円。マリノテラスで扱う商品はピザ3種・パスタ3種で、価格はすべて540円(税込)。サラダ・パエリア・フライドチキン・ポテト・ドルチェ・ドリンクと、サイドメニューも充実している。自宅でパーティもできる品揃えなのだ。
 客単価はテラスが1500円、電話予約テイクアウトが2000円、デリバリーが3500円。デリバリーは1500円以上で配達料無料となる。  ピザはピザ職人が一枚一枚手伸ばしし、本格石窯で素早く焼き上げている。ピーク時には3人のプロがローテーションで焼く。パスタはソースと麺を分け、自宅で混ぜる形で提供。電子レンジ対応で、できたての味を楽しむことができる。

2.マリノテラスの行列インパクト
 この店の前にはスーパーとホームセンターがあり、交通量も多い。駐車場に昼も夕方も行列ができる光景は、かなり人目を引く。何事かと思って様子を見に来る(私のような!)人が大勢いて、リーズナブルな価格にもびっくりし、そのまま行列に並んでしまう。もちろんその背景には、東海地区トップクラスのイタリアンとしての信用力がある。

3.マリノホスピタリティのサービス力
 マリノはホスピタリティサービスのレベルが高いことから、女性客やファミリー客に支持されている。ちょっとしたハレの日(記念日)の利用も多い。
 私が取材のため訪れた時も、テラスからかなり離れた場所に駐車したにも関わらず、車から降りるや女性スタッフが気持ちのこもった大きな声で「いらっしゃいませ、こちらへどうぞ!」と呼びかけてくれた。お客様に集中していなければできないことだ。
 田村店長は、たとえマスクをしていても「目の笑顔」でアイコンタクトし、スピード感、会話、気遣いを大切にしておもてなしするよう指導している。デリバリーの提供時間も30分以内を意識しているとのこと。


「5:4.5:0.5」のスタッフ比率
 人材を組織への貢献度で分類した「2:6:2の法則」(優秀な人が2割、普通の人が6割、劣る人が2割)という組織論がある。この店での割合を尋ねたところ、田村店長は「5:4.5:0.5」と答えた。私のクライアント先における店長セミナーで同じ質問をすることがあるが、優秀な人を「5割」と答えられる店長は5%にも満たない。田村店長は、「4.5」の「普通の人」のレベルが高いことにも自信を持っている。(すばらしい!)>
 高いレベルを維持するために日頃から厳しくチェックしているのはピザの品質だ。週末のピーク時でも妥協は許さず、ダメ出しをする。3チェック体制(調理者とパントリー担当者と提供者の3者でチェック)で高品質のピザを提供しており、少しでも問題があれば作り直しとなる。>
 接客のポイントは笑顔。スタッフ採用の面接時には、応募者の笑顔をスマホで撮影する。なかなか笑顔が出ない人は不採用にすることもある。  クレンリネスも徹底。スタッフがシフトを上がる時、1カ所きれいにして帰るよう指導している。トイレやテーブルや窓ガラスなど、清掃した場所をホワイトボードに記入して報告する。これはマリノの伝統である。>
 スタッフとのコミュニケーションにも気を配っている。「毎日全員に声がけしています」と田村店長。グループLINEでは成長しているスタッフをほめてみんなが参考にできるよう「良いことリスト」を全員で共有している。>
 3月の卒業式では、プロジェクターで投影された思い出の映像にみんなが涙した。先輩から後輩へ、そして後輩から先輩へと、胸を打つメッセージが届けられた。

 チーズマリノの取材を通じて、コロナショックのような状況下でも繁盛を続ける店とはどんな店なのか、あらためて考えさせられた。そのポイントは次の3つだ。
①主力商品の質が高く、クセになる独自の味を誇っている。
②お客様に絶えず刺激(次の一手)を与え続けている。(マリノテラス)
③店舗オペレーション力とスタッフの意識が高い。
マリノのテイクアウトの成功を目の当たりにし、この3点こそが大事なのだと再確認させられた。すばらししい話をありがとう、田村店長!


【店舗プロフィール】

店舗名/チーズマリノ 日進竹の山店
所在地/〒470-0136 愛知県日進市竹の山三丁目1008番地
TEL/0561-75-2272
店舗面積/80坪
客席数/80席
営業時間/11:00~23:00
客単価/1500円
平均月商/1200万円
従業員数/正社員2人  P/A 40人


2020年7月号特集コラム

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